俺が産まれたのは、視界の先が真っ白に染まる銀白の街
身を切るほどの寒さの中、暖かな家族、仲の良い友達たちと
身を寄せ合って、穏やかな時を刻む 雪国・・スケイド国。
雫 『日向、初輝姉さんの言うことをちゃんと聞くのよ?』
日向 『母さん・・。大丈夫、僕に任せてよ。』
穂影 『雫・・・・・・・・。大丈夫、後のことはわしに任せなさい』
初輝 『お母さん。兄弟の事は私に任せて。嫁いでも家族なんだから』
俺の母さんと父さんは、両親に反対されたまま結婚をした。
まだ若かった二人は、二人だけの世界を求めて、この国に渡って来た。
小さいころ、良く両親が話してくれた。
雫 『母さんと父さんの暮らしてた国はね、1年に4回、世界の色が変わる国
だったのよ。』
日向 『色が・・・・?変わるの??』
雫 『そう・・・・。
春は爽やかで色とりどりの花が咲き乱れる一面の緑の季節。
夏は、照付ける太陽の暑さと海からくる清々しい風が溢れる青い季節。
秋は、木々の葉が赤く萌え、田の稲が黄金に煌めく琥珀の季節。
冬は、冷えた風が一面の白を運び、星空は高く澄み渡る翡翠の季節。』
日向 『わぁ。。凄いね。1年で4つも綺麗な景色が見れるんだね。
おばーちゃんやおじーちゃんは、その国にいるの?』
雫 『ぇ・・ええ・・・(苦笑) 母さんや父さんの両親も兄弟も・・・。その国にいるわ』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
泣き出しそうな母の顔を見て、すごく悲しくなった記憶がある。
それでも、母は懐かしそうに、愛おしそうに祖国の話をしてくれた。
俺達兄弟を、厳しくも優しく 沢山の愛情を注いでくれた母が、今旅立とうとしてる。
初輝姉さんの結婚を終えて数ヶ月たったこの時期に、母がいなくなってしまう。
まだ幼い、菜穂や日影は父さんの足にしがみ付き 涙をいっぱい溜めて
母の最期の笑顔を見つめていた。
雫 『さようなら、みんな。どうか幸せに・・・・・』
!?!?!?
『母さん!? 母さん!?』
穂影 『逝ってしまったか。。。。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』
父は声を殺して、母の胸で泣いた。
その時の二人の空間には、俺達子供では入れない 大きな愛情で包まれた気がした。
初輝 『父さ・・・・・・・。』
父さんを慰めようと、声をかけた姉が言葉をとめた。俺は姉の後ろからそっと
覗いて何があったか見ようとした。
穂影 『ありがとう、雫・・・。先に逝って親父達に伝えてくれ。わしは幸せだったと。
わしもすぐ逝くよ。寂しくはないから。みんなと待っていておくれ・・・。』
そう呟くと、父は母の頬に優しくキスをした。この世での最後のキス。。。
母さんのその顔は、なんて美しいのだろう。優しい笑顔で今にも笑い出しそうだった。
その笑顔が、母がどれだけ幸せな時を過ごしてきたのか、俺達に教えているようだった。
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数ヶ月して父も母を追うように この世を後にした。
二人だけで手をとり、誰も知らないこの地に踏み出した二人は
俺達という生きた刻印を残して ケヤトロの神々の住む世界へと
永遠に旅立っていった。
若かった両親の物語は、また違う国で一から始められる。。幸せな恋人として。
初輝 『最高に、素敵な人たちだったわ。』
日向 『姉さん・・・・。』
初輝 『私の人生はいま、夫と一緒に始まったばかりだもの。くよくよしてたら
あの二人に笑われちゃうわよね?w』
そういって、微笑んだ姉の笑顔が母と同じで、胸の奥がくすぐったかった。
日向 『あぁ、そうだな。 俺達の物語は今はじまったばかりさ。』
両親の用になんて、贅沢は言わない。だけど、俺は両親に恥じない生き方を
しようと思う。 俺達はまだ、輝くチャンスを掴みかけている途中なのだから。
そう・・・・。
“今”は 始まったばかり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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